IoT(Internet of Things)は、日本語では「モノのインターネット」といわれる概念です。 身の回りのさまざまなモノをインターネットにつなぎ、情報交換を行うことで我々に役立てようというものです。
身近な例が IoT 家電です。 外出先からビデオの予約、帰宅時にあわせたお風呂のお湯はり、玄関の監視カメラの確認などができるようになってきています。
| 分野 | システム |
|---|---|
| 音声アシスタント | 人工知能による音声認識の機器とインターネットをつなぎ、音声で買い物や家電の操作を行う |
| 交通 | タクシーの移動経路の支援を行う |
| 防犯 | 監視カメラの情報を集約し、画像認識で不審な人物や危険な状況を見分ける |
| 医療 | 遠隔地で手術器具を操作する遠隔手術 |
| 健康 | 身に着けるだけで心拍数などの生体情報を計測し、健康情報を分析する |
| インフラ | 水道やガスのメーターの情報を集約して遠隔検針を行う |
ユビキタス(ubiquitous)とは、ラテン語の宗教用語で「至る所にある、偏在する」という意味です。
一神教であるキリスト教の神は全知全能であり、ありとあらゆるところに偏在して人間を見守っている ── そのような概念を表す言葉でした。
そこから転じて、身の回りのありとあらゆるものにコンピュータが入り、
それらが相互にコンピュータネットワークで接続されるという概念を表すようになりました。
類語としてパーヴェイシブ(pervasive、普及する)コンピューティングなど、さまざまな用語が作られています。
ユビキタスコンピューティングが提唱された当時は、ネットワークの性能が低く、 どこでも無線でつなげる環境ではありませんでした。 そのため、モノにセンサーと超小型コンピュータを埋め込んでモノそのものを賢くし、 近くにあるモノどうしでやりとりする方式が考えられていました。
現在は、インターネットが普及し、どこでも高速な無線通信ができるようになったため、 モノにはセンサーと、計算能力があまり高くない低価格・低消費電力のコンピュータを埋め込み、 得られた情報をインターネット経由で集めてクラウド側で処理する方式が一般的になっています。
IoT の多くは、モノとインターネットを無線通信でつなげます。 無線通信にはさまざまな種類があり、 通信の信頼性・通信の速度・通信が届く距離・消費電力・通信にかかる費用といった性質が異なります。 用途と性質によって適切なものを選ぶ必要があります。
| 3G / 4G / LTE | 無線 LAN | Bluetooth | LPWA | |
|---|---|---|---|---|
| 通信速度 | 最大数百 Mbps | 最大数百 M〜数 Gbps | 最大数 Mbps | 数百〜数十 kbps |
| 通信距離 | 数百 m〜数 km | 数百 m | 数 m〜数十 m | 数十 km 以上 |
| 消費電力 | 高い | やや高い | 低い | 非常に低い(電池で数年) |
| 費用 | 月額数千円以上 | 低い | 低い | 低い |
| 信頼性 | 高い | あまり高くない | ― | ― |
| 登場 | ― | ― | ― | 2016 年頃 |
無線 LAN の品質があまり高くない理由。 家庭で使われている無線 LAN の一部の周波数は、 Bluetooth で使っている周波数や、電子レンジの使用時に発生する電磁波の周波数と同じです。 そのため、電子レンジの使用時や、マンションなど狭い範囲で多くの人が無線通信を使ったときに、 速度が遅くなったりつながりにくくなったりします。
普段は何も動作せず、必要なときに人などが近づいて情報を要求したときだけ通信するという、 受動的な形態も考えられます。それに適しているのが RFID です。
RFID(radio frequency identifier)は、数 cm〜数 m の近距離無線通信によって、 内部に格納している ID 情報を通信する技術のことで、 RFID を使って ID を通信できる機器を RFID タグといいます。
パッシブタグの仕組み。 アンテナで受信した外部から照射された電波を用い、電磁誘導などの方式で発電を行い、 その電力を使って内部の ID 情報を無線通信で送り返します。だから内部に電源が要りません。 発電できる電力は微弱なため通信距離は長くても数 m 程度ですが、電源不要という点は非常に大きな利点です。 最近では、RFID を米粒よりも小さな IC チップで実現できるようになっています。 この技術は Suica などの非接触 IC カードでも使われています。
| バーコード | RFID | |
|---|---|---|
| 視認性 | 見えている必要がある | 見えている必要はない |
| 距離 | 短い(数 cm〜数十 cm) | 長い(数 m〜数十 m) |
| 同時性 | 同時に一つしか読み取れない | 同時に複数読み取れる |
| データの量 | 少ない | 多い |
| 書き込み | 不可能 | 可能 |
| 汚れ | 弱い | 強い |
| 値段 | 安い | 高い |
ほとんどの性質は RFID のほうが優れており、 近づけるだけで同時に複数のタグを読み込めるという性質は、 レジの清算の高速化などにつながります。
ただしコストの面ではバーコードに大きく劣り、現在では 1 つ 10 円以上するものが多いのが実情です。 IoT で想定される低価格の大量のモノに RFID タグをつけるには、 もっとコストを抑え、1 円以下にする必要があるといわれています。
IoT ではさまざまなものをインターネットにつなぎますが、その数は年々爆発的に増え、 2020 年には 500 億台以上のモノが接続されると予想されていました。
従来インターネットの住所として使われてきた IPv4 は 32 桁の 2 進数(32 ビット)で住所を表すため、 232 = 約 40 億種類の住所しか扱えません。
そこで 128 桁の 2 進数で住所を表す IPv6 という新しい仕様が策定され、 徐々に普及し始めています。IPv6 は 2128 = 340 潤(潤 = 10 の 36 乗)という 途方もない数の住所を区別でき、 地球上に存在する砂粒一つ一つに住所をつけることが可能になったといわれます。 IoT における住所の枯渇問題を解決できるわけです。 (IPv6 の仕様そのものは 1998 年に作られたものです。)
IoT でモノを識別するための ID にはさまざまな仕様が考案されていますが、 ここでは日本で開発された ucode を紹介します。
近年では Amazon、Google、Microsoft などの企業が、IoT 向けのクラウドサービスを提供しています。
個人でこうしたサービスを構築しようとすると、収集した情報を送る際に暗号化するなど、 セキュリティに気を遣う必要がありますが、 個人でセキュリティにしっかり対応したシステムを作ることは非常に困難です。 IoT 向けクラウドサービスは、そうしたセキュリティも考慮したサービスを提供しています。 自分で構築・管理する時間や費用と比べると安くつくことが多いので、 個人だけでなく企業でも利用が増加しています。