情報学基礎 / 第 14 回

IoT と社会(2)

実証実験と実例、そして「毒にも薬にもなる」という問い

この回のねらい

IoT とセキュリティ

監視カメラをインターネットに接続し、外から確認するシステムが 外部から不正にアクセスされたという事例が、実際にニュースになったことがあります。

不正アクセスの原因の一つは、監視カメラにアクセスするための ID とパスワードを初期設定のまま使っていたというものでした。 また、ある調査によると、パスワードに 123456password のような 安易なものをつけている人が多く、そのようなパスワードは容易に破られてしまいます。

実際に起きた被害の例。 インターネットにつないだ玄関の監視カメラがハッキングされ、 家の人が外から確認したときに常に玄関の扉が閉まっている画像に差し替えられたものを見せられていた、という報道がありました。
また、カメラの付いた IoT 家電がリビングにあれば、 知らないうちに私生活の様子がすべて見られてしまう可能性があります。 お風呂に入っているときに勝手に湯沸かし器を遠隔操作されてお湯の温度が急上昇するなど、 場合によっては命の危険につながるようなリスクも発生しえます。

IoT 家電の中には、パスワードなどのセキュリティ設定ができるように見えるにもかかわらず、 実際には何のセキュリティ設定も行われないものが存在します。 とくに外国産などの安価な IoT 家電には、何かが仕掛けられている可能性があるので気をつけたほうがよいでしょう。

RFID とアクセス制御

モノの ID が記録されている RFID は、RFID リーダーを使えば誰でも中の ID を取得できてしまいます。 そのため、その ID から得られる情報は、人や状況によって区別できるようにする必要があります。

DDoS 攻撃

IoT の普及によって起きる可能性の高いセキュリティリスクの一つが DDoS(Distributed Denial of Service attack)攻撃です。

用語意味
DoS 攻撃 サーバに対して処理能力を超えるような大量の通信を行い、サーバの機能を麻痺させる攻撃
DDoS 攻撃 攻撃を一か所からではなく、あちこちから分配(distribute)して行う DoS 攻撃

IoT ではインターネットに大量の機器を接続するため、それらのセキュリティが弱い場合、 大量の機器が犯罪者によって乗っ取られてしまうことで、 従来よりもさらに DDoS 攻撃が容易に行えるようになることが懸念されています。

DDoS 攻撃を起こしてみる動かせます

実証実験と実例(1)食品トレーサビリティ

食品の生産段階から流通、販売の各段階の経過を記録し、その情報を消費者に提示することで、 食品事故等が発生した場合にも速やかに原因特定と被害範囲の確定ができるようにする ── そのための食品トレーサビリティ実証実験2003 年頃に行われました。

たとえば農作物の場合、種を植える段階から種に ucode によるユビキタス ID を付与し、 育成・収穫・流通・販売まで、生産開始から消費者の手に渡るまでの情報を 逐一インターネット上のデータベースに登録して確認できるようにします。 店頭で販売される農作物には RFID タグが付けられており、 ユビキタスコミュニケータという読み取り装置で読み取ることで、消費者が情報を受け取れます。

バーコードでは代わりにならないのか? 日本で使われている JAN コードと呼ばれるバーコードに記録されている情報は、 商品の会社名と商品名を表す情報しかありません。 つまり個々の商品を区別することができないのです。

ある工場の製品に問題が見つかった動かせます
同じ銘柄の商品が、3 つの工場から出荷されて店頭に並んでいます。B 工場の製品に問題が見つかりました。

実証実験と実例(2)自律移動支援プロジェクト

身体的状況、年齢、言語等を問わず、「いつでも、どこでも、だれでも」 移動等に関する情報を入手することを可能にする自律移動支援プロジェクトが、 国土交通省によって 2009 年に実施されました。

実証実験と実例(3)ユビキタス ID を使った事例

実際に使われている例クリック
事例をクリックしてください。

実証実験と実例(4)自動運転

近年の無線技術の発達により、もっとも期待されている IoT の技術の一つが自動運転です。

遅延のあいだに、車はどれだけ進むか動かせます

自動運転のレベル

自動運転のレベルクリック
レベルをクリックしてください。

事故を 100% 防ぐことはできない。 どんなに完璧な自動運転システムを作ったとしても、事故を 100% 防ぐことは不可能だと言われています。 実際に自動運転の実験中に死亡事故が起きたこともあり、 完全自動運転中に事故が起きた場合に誰が責任を負うのかという問題に対する 世界共通の答えはまだ存在しません。唯一の正解も存在しません。 このような問題にどのような答えを出すかは、それぞれの国の中で議論を深めていくことで決めていくことになるでしょう。

まとめ ── IoT の光と影

IoT は、ここで紹介した以外にもさまざまな事例があり、 今後さらに急速に発展し、社会に浸透していくことが予想されています。 IoT は多くの点で我々の生活を豊かにしてくれる力をもっていますが、 一方でセキュリティのリスクなど、負の側面ももっています。

また、身の回りのありとあらゆるものにセンサーが取りつけられるということは、 IoT を使って24 時間、ありとあらゆる所で人を監視することができる可能性があるということを意味します。

現在でもすでに、SNS への投稿やネットショッピングなど、 インターネット上に残した行動の履歴からかなりの精度で個人情報を特定することが可能になっているといわれていますが、 IoT の普及によりさらにその精度が高まることは間違いないでしょう。

信用度スコア。 政府の力が強い中国では、国民の日々の行動をさまざまな基準で点数化する 「信用度スコア」というシステムの構築が政府の主導で進められています。 メリットが得られる反面、信用度のスコアが低いと公共交通機関の利用が制限されるなどの罰則が科されており、 SF の世界で語られていたような監視社会が実際に実現していくのではないかと危惧する人もいます。

どんなに素晴らしい技術であっても、それを運用するのが人である以上、 使い方によって毒にも薬にもなってしまうのが現実です。
今後 IoT をどのように運用していくかを人任せにするのではなく、 我々自身も議論していくことが重要となります。

考えてみようこの授業のしめくくり
問いをクリックしてください。答えは一つではありません。第 1 回から学んできたことを使って考えてみてください。
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