システム管理論 II / 第 2 回

おにぎり管理問題(1)

新聞売り子の問題 ── 何個仕入れれば儲かるか

この回のねらい

あなたはコンビニの店長です

明日、おにぎりは何個売れるでしょうか。多く仕入れれば売れ残って捨てることになり、 少なく仕入れれば売り切れて「売れるはずだった分」を逃します。 天気にも左右されます。正解は事前にはわかりません。

わからないなりに、いちばん得をする決め方はあるでしょうか。 これが 新聞売り子の問題(newsvendor problem)と呼ばれる、 在庫管理のもっとも基本的なモデルです。

条件

売値1 個 100 円仕入値1 個 60 円
売れ残り値はつかない(仕入値がそのまま損になる)

明日の需要(売れる個数)は、これまでの記録からこう見積もれたとします。

需要の確率分布(合計 100%)
個数3031323334353637383940
確率1%2%3%2%3%4%4%4%6%6%6%
個数41424344454647484950
確率7%7%8%11%9%6%4%3%2%2%

考え方

仕入量を q 個 と決めたとします。実際の需要が d 個だったとき、売れる個数は min(d, q) です(需要が仕入より多くても、q 個しか売れない)。 だから売上の期待値はこうなります。

期待売上 = 100 円 ×〔 Σd<q d・P(d) + q・Σd≧q P(d) 〕

期待利益 = 期待売上 − 60 円 × q

前半は「需要が仕入より少なくて、需要のぶんだけ売れた場合」、 後半は「需要が仕入以上あって、仕入れた q 個が全部売れた場合」です。

動かして確かめる

仕入量を変えて、期待利益がどう動くか見るスライダを動かす

見てほしいこと。 仕入量を増やすと期待売上は増え続けますが、原価は直線で増えます。 差である期待利益は途中で頭打ちになり、そこから下がります。 その頂点が最適な仕入量です。売値と仕入値を変えると、頂点がどちらへ動くかも確かめてください。

手で計算してみる(q = 40 の場合)

スライダの結果と一致するか、自分でも計算してみましょう。

  1. 原価 60 円 × 40 個 = 2400 円
  2. 需要が 40 未満のとき(30〜39 個)は需要のぶんだけ売れる
    (30×0.01 + 31×0.02 + … + 39×0.06) = 12.50 個ぶん
  3. 需要が 40 以上のときは 40 個すべて売れる。その確率は 65%
    40 × 0.65 = 26.00 個ぶん
  4. 合わせて 38.50 個ぶん。期待売上 = 100 円 × 38.50 = 3850 円
  5. 期待利益 = 3850 − 2400 = 1450 円
仕入量ごとの期待利益(抜粋)
仕入量期待売上原価期待利益 仕入量期待売上原価期待利益
3030001800120041390924601449
3534712100137142396125201441
3937852340144545406927001369
4038502400145050411030001110

期待利益は 40 個のとき 1450 円で最大になります。

機会損失

機会損失とは、 「売れるはずだったのに、商品が無くて売れなかった」ことによる損失です。 帳簿には現れません。仕入れが足りないと、 うまくすれば得られたはずの利益が得られない。これも立派な損失だ、と考えます。

売れ残りの損(仕入値 60 円)と、品切れの損(もし売れていれば得られた利益 40 円)。 この 2 つの損を天秤にかけているのが、このモデルの本質です。 どちらの損が大きいかで、多めに仕入れるべきか少なめかが決まります。 次回はその関係を 臨界比 という 1 本の式にまとめます。

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