明日、おにぎりは何個売れるでしょうか。多く仕入れれば売れ残って捨てることになり、 少なく仕入れれば売り切れて「売れるはずだった分」を逃します。 天気にも左右されます。正解は事前にはわかりません。
わからないなりに、いちばん得をする決め方はあるでしょうか。 これが 新聞売り子の問題(newsvendor problem)と呼ばれる、 在庫管理のもっとも基本的なモデルです。
| 売値 | 1 個 100 円 | 仕入値 | 1 個 60 円 |
|---|---|---|---|
| 売れ残り | 値はつかない(仕入値がそのまま損になる) | ||
明日の需要(売れる個数)は、これまでの記録からこう見積もれたとします。
| 個数 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 確率 | 1% | 2% | 3% | 2% | 3% | 4% | 4% | 4% | 6% | 6% | 6% |
| 個数 | 41 | 42 | 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | 50 | |
| 確率 | 7% | 7% | 8% | 11% | 9% | 6% | 4% | 3% | 2% | 2% |
仕入量を q 個 と決めたとします。実際の需要が d 個だったとき、売れる個数は min(d, q) です(需要が仕入より多くても、q 個しか売れない)。 だから売上の期待値はこうなります。
期待売上 = 100 円 ×〔 Σd<q d・P(d) + q・Σd≧q P(d) 〕
期待利益 = 期待売上 − 60 円 × q
前半は「需要が仕入より少なくて、需要のぶんだけ売れた場合」、 後半は「需要が仕入以上あって、仕入れた q 個が全部売れた場合」です。
見てほしいこと。 仕入量を増やすと期待売上は増え続けますが、原価は直線で増えます。 差である期待利益は途中で頭打ちになり、そこから下がります。 その頂点が最適な仕入量です。売値と仕入値を変えると、頂点がどちらへ動くかも確かめてください。
スライダの結果と一致するか、自分でも計算してみましょう。
| 仕入量 | 期待売上 | 原価 | 期待利益 | 仕入量 | 期待売上 | 原価 | 期待利益 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 30 | 3000 | 1800 | 1200 | 41 | 3909 | 2460 | 1449 |
| 35 | 3471 | 2100 | 1371 | 42 | 3961 | 2520 | 1441 |
| 39 | 3785 | 2340 | 1445 | 45 | 4069 | 2700 | 1369 |
| 40 | 3850 | 2400 | 1450 | 50 | 4110 | 3000 | 1110 |
期待利益は 40 個のとき 1450 円で最大になります。
機会損失とは、 「売れるはずだったのに、商品が無くて売れなかった」ことによる損失です。 帳簿には現れません。仕入れが足りないと、 うまくすれば得られたはずの利益が得られない。これも立派な損失だ、と考えます。
売れ残りの損(仕入値 60 円)と、品切れの損(もし売れていれば得られた利益 40 円)。 この 2 つの損を天秤にかけているのが、このモデルの本質です。 どちらの損が大きいかで、多めに仕入れるべきか少なめかが決まります。 次回はその関係を 臨界比 という 1 本の式にまとめます。