システム管理論 II / 第 3 回

おにぎり管理問題(2)

臨界比 ── 損の天秤を 1 本の式にする

この回のねらい

前回の答えを、別のやり方で出す

前回は仕入量 30〜50 個をすべて計算して、期待利益が最大の 40 個を見つけました。 21 通り計算すれば確かに答えは出ますが、需要の幅が 0〜1000 個ならどうでしょう。 1 本の式で答えが出せると便利です。

1 個増やすと得か損か

いま q 個仕入れることに決めているとして、もう 1 個増やすべきかを考えます。 増やした 1 個には 2 つの運命があります。

その 1 個が起きる確率損益
売れた(需要 > q だった)P(D > q)利益 +(売値 − 仕入値) = +40 円
売れ残った(需要 ≦ q だった)P(D ≦ q)損失 −仕入値 = −60 円

増やしたほうが得なのは、期待値がプラスのときです。

40 × P(D > q) − 60 × P(D ≦ q) > 0

⇔ P(D ≦ q) < 40 ÷ (40 + 60) = 0.4

つまり 累積確率 F(q) = P(D ≦ q) が 0.4 を超えるまでは増やしたほうが得で、 超えたところで止めるのが最適です。この 0.4 を 臨界比(critical ratio)と呼びます。

臨界比 CR = 品切れの損 ÷(品切れの損 + 売れ残りの損)  = (売値 − 仕入値) ÷ 売値  = (100 − 60) ÷ 100 = 0.4

最適仕入量は、F(q) ≧ CR となる最小の q

実際に当てはめる

需要の累積確率を並べます。

q3536373839404142
F(q)0.150.190.230.290.350.410.480.55

F(39) = 0.35 はまだ 0.4 未満、F(40) = 0.41 で初めて 0.4 以上になります。 よって 最適仕入量は 40 個。前回 21 通り計算して得た答えと一致しました。

動かして確かめる

売値と仕入値を変えると、臨界比と最適量はどう動くか数値を変える

見てほしいこと。 仕入値を下げる(=売れ残りの損が小さい)と臨界比は上がり、多めに仕入れるのが得になります。 逆に仕入値を売値に近づけると臨界比は 0 に近づき、ほとんど仕入れないのが正解になります。 「儲けが薄い商品ほど、品切れを恐れず在庫を絞る」── 直感とも合うはずです。

まとめ

条件の変化臨界比 CR最適仕入量
売値が上がる(儲けが厚くなる)上がる増える
仕入値が上がる(売れ残りが痛い)下がる減る
需要のばらつきが大きい変わらない同じ CR でも、分布が広いぶん量は動く
← 第2回 第4回 プロジェクト管理(1) →