システム管理論 II / 第 6 回

ゲーム理論(1)

相手がいる意思決定 ── 相手の立場になって考える

この回のねらい

ここまでとの違い

第 2〜3 回のおにぎり問題では、相手は「天気」や「客の気まぐれ」でした。 確率で振る舞うだけで、こちらの手を読んで対抗してくる存在ではありません。

ところが現実の経営では、相手もこちらを見て手を決めます。 値下げすれば競合も値下げする。新製品を出せば追随される。 このとき「自分にとっていちばん良い手」は、相手が何をするかによって変わります。 これを扱うのがゲーム理論です。

「ゲーム」とは

ここでいうゲームとは、 チェスやポーカーのような「各人の行動を規定する一組のルール」のことです。 そのルールに従って実際に行われたものをプレーと呼びます。

ゲーム理論は、利害が対立する行動主体からなる社会での人間行動を、 ゲームとして形式化することで理論的に解明しようとします。 フォン・ノイマン(J. von Neumann)とモルゲンシュテルン(O. Morgenstern)に よって大成されました。

2 つのアプローチ

協力ゲーム非協力ゲーム
話し合いある無い(あっても拘束力なし)
合意の拘束力ある無い
各人の決定提携して決めるそれぞれ独立に決める
中心概念配分・提携ナッシュ均衡

この授業で主に扱うのは非協力ゲームです。 「相談できない」「相談しても守られる保証がない」という、 実務でよくある状況を扱えるからです。

ナッシュ均衡とは、 「相手の手を所与としたとき、自分だけが手を変えても得をしない」という状態のことです。 誰にも一人で抜け駆けする動機がないので、そこで落ち着きます。 第 10 回の囚人のジレンマで、この概念の意味を深く見ます。

相手の立場になって考える

問題。あなたは A さん、相手は B さんです。ルールは簡単です。

2 人は協力しません。2 人とも利己的です。あなたはどちらを言いますか。

考え方 ── 後ろから解く

自分の手を先に決めようとすると迷います。相手の番から先に考えます

もしあなたが「ノー」と言ったらB の取り分B はどうするか
B が「イエス」3 万円B は利己的なので
「イエス」を選ぶ
B が「ノー」2 万円

B は必ず「イエス」を選びます。そのときあなたの取り分は 0 円です。 一方、あなたが最初に「イエス」と言えば 1 万円

よってあなたは「イエス」と言うべきです。 「2 人とも 2 万円」というもっとも望ましそうな結果は、 B にそれを選ぶ動機がないため実現しません。

ここで使ったのが後ろ向き帰納法(バックワード・インダクション)です。 最後の手番から順に「その人ならどうするか」を確定させ、前へさかのぼる。 ゲーム理論のもっとも基本的な解き方です。

教訓。 自分にとって望ましい結果があっても、相手にそれを選ぶ理由がなければ実現しません。 交渉や契約の設計とは、相手に「こちらの望む手を選ぶ動機」を与える作業だ、とも言えます。

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