システム管理論 II / 第 9 回

ゲーム理論(4)

混合戦略 ── サイコロを振ると、なぜ得をするのか

この回のねらい

バッターとピッチャー

あなたは野球のバッターです。敵のピッチャーは直球変化球を使い分けます。

まず絶対優位を探します。ピッチャーが直球なら「直球と予想」(80% > 10%)が良い。 変化球なら「変化球と予想」(30% > 0%)が良い。列によって逆なので、絶対優位はありません。

次にマキシミン。行の最小は「直球と予想」が 0%、「変化球と予想」が 10%。 大きいほうは 10% なので、マキシミン戦略は「変化球と予想し続ける」、保証は 10% です。

しかしこれは、少し情けない結論です。 最良の手(80%)があるのに、相手が邪魔をするから使えない。 毎回「変化球」と予想すると読まれてしまい、ピッチャーは直球ばかり投げてくるでしょう。

いつも同じ手を出さない

いつも決まった手を出すことを純粋戦略といいます。 これに対し「3 回に 1 回はこうしよう」というように、 確率的に手を選ぶことを混合戦略といいます。

読まれなければ、相手はこちらの手に合わせられません。 では、どの割合で混ぜるのがいちばん良いでしょうか。

動かして確かめる

「直球と予想」を確率 p で選ぶ。p を動かして保証水準を見るスライダを動かす

式で求める

「直球と予想」を確率 p、「変化球と予想」を 1−p で選ぶとします。 ピッチャーの手ごとに、こちらの打率の期待値はこうなります。

ピッチャーが期待打率
直球を投げる80p + 10(1−p) = 10 + 70p
変化球を投げる0p + 30(1−p) = 30 − 30p

グラフでは、この 2 本の直線のうち低いほうが「保証できる打率」です (相手はこちらに不利なほうを投げてくるから)。 低いほうを最大にするには、2 本が交わる点を選べばよい。

10 + 70p = 30 − 30p ⟹ 100p = 20 ⟹ p = 0.2

このときの期待打率 = 10 + 70×0.2 = 24%

純粋戦略の 10% が、混合戦略では 24% に上がりました。 5 回に 1 回だけ「直球」と予想し、残り 4 回は「変化球」と予想する。 これがこのゲームでのいちばん良い戦い方です。

なぜ有利になるのか。 純粋戦略は読まれます。読まれた相手は、こちらの最悪の手を狙ってきます。 確率的に混ぜると、相手はこちらの手を確実には読めません。 その「読めなさ」が価値を生んでいます。
交わる点を選ぶということは、相手がどちらを投げても期待値が同じになるようにするということです。 こうすると相手はこちらを狙い撃ちできなくなります。

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